日本ニュース 戦後編 第145号
1948年(昭和23年)10月19日
[1]千数百年前の人骨とホコ モヨロ貝塚·北海道 01:09
網走市のモヨロ貝塚は、北海道大学児玉[作左衛門]博士らの手によって、10月4日から2度目の発掘が行われました。食料にされたと思われるキツネの骨、クマの骨。鉄の矛を持った人の骨が出たのは日本で初めてでした。このホコと頭蓋骨から、これはアイヌ族ではなくアレウト人で、こんな家に住んでいたと想像され、千数百年前、遠くシベリアから渡ってきたことがわかりました。
[2]日給十円五十銭の女工さん 01:21
10月10日、千葉県地方労働委員会で東金町石井服装工場の珍しい争議が問題になりました。日給10円50銭をめぐって女工さんと会社側の交渉。
<女工A>
私たちを、あのね、犬よりか低い賃金を考えてくださいよ。人間なんだから。
<女工B>
私たちに真心を少し汲んでください。お願いします。
<女工C>
10円50銭で16回じゃあんまりひどすぎるじゃありませんか。
<経営者>
うちはそれ以上のことはできません。申し訳ありません。委員会の方たちどうもご苦労さんです。どうもあいすいませんでした。
あんまりだわとハンストに入る者もあり、それをまた泣いてとめる闘争委員長もあり、女工さんのストらしい風景でした。
<闘争委員長>
…ここまできてるんだからね、あんたたちの体が弱っちゃってね、連中も待っているということはよくわかっているのよ。だからさ、もしものことがあったらと思うからさ、私たちはあんたたちのことが心配でしょうがないのよ。
11日、月収2350円というところで一応話ができ、この女工さんばかりの争議も70日目で解決しました。
[3]福井の“斜塔”とりこわし<時の話題> 00:43
北陸大震災で倒れかかった福井市の大和百貨店。いざ取り壊しとなると、3万7千貫もある巨体を支えている4本の鉄柱を焼き切らなければどうにもならないのでなかなかの大仕事です。10月9日、やっと地上50尺の足場で準備完了。これでやっと市民も安心しました。
[4]今度は闇タバコ部落へ 横浜<時の話題> 00:35
10月8日、東京地方専売局では、鶴見署の応援を得て、横浜市鶴見のタバコ密造部落を奇襲。この日、本物そっくりのラッキーストライクや手巻きタバコ8万本、そのほか大量の葉タバコなどがあとからあとから出てきました。
[5]浅間の火まつり 長野<時の話題> 00:33
浅間温泉御射神社のお祭りが10月6日から行われました。麦わらを束ねたこのたいまつ、直径5尺、長さ8尺、小唄市丸さんの顔も見えて温泉町は大賑わい。この物騒な贈り物を投げ込まれた家は商売繁盛するといわれています。
[6]長崎名物オクンチまつり<時の話題> 00:29
10月7日、8日は、長崎名物、諏訪神社のオクンチまつり。200年前、中国から伝わった日本にはただ一つしかないという蛇踊りや、今どきは珍しい娘さんの勇ましい姿も飛び出す騒ぎでした。
[7]ようやくこぎつけた吉田首班 02:34
昭和電工疑獄事件の拡大で、ついに内閣を投げ出した芦田氏のあとをうけて、だれが次の首班になるか、これを相談する吉田、芦田、片山、三木、佐竹の5党首会談は、10月10日、松岡議長の斡旋で開かれましたが、結局たいした話し合いもつきません。このため11日からの臨時国会もあしたで散会。
<松岡議長>
…これにて散会をいたします。
このころ民主党では、吉田首班を嫌って同じ民自党の山崎幹事長を担ぎ出そうという空気があり、当の吉田総裁は渋い顔です。社会党の片山さんはいち早く野党声明。ところが、問題の山崎氏は、14日、突如議員の辞職を申し出で、担ぎ出しを策した民主党をすっかりあわてさせました。
<福田民主党副幹事長>
相当複雑怪奇な陰謀がある、ということも推定しだ、巷にそういう声もあるもんだから、これを徹頭徹尾、営委員会で調査して、そのうえで態度を決したい。
この日、各派交渉会は各党各様の思惑や裏面工作でもめにもめましたが、結局、午後9時より首班選挙を行うことになり、堂々巡りを繰り返すこと2回、決戦投票で吉田氏が首班に選ばれました。
<事務総長>
184点、吉田茂君。
<議長>
本院は吉田茂君を内閣総理大臣に指名するに決しました。
かくて吉田民自党総裁はやっと新内閣の首班までこぎつけましたが、これに対する各党の態度が複雑で、組閣の前途は難航が予想されています。
