日本ニュース 戦後編 第78号
1947年(昭和22年)7月8日
[1]片山首相国会第一声 01:26
<議長>
「内閣総理大臣片山哲君」
7月1日、衆議院本会議で片山首相は施政方針演説を行い、危機突破に対処する政府の方針を述べました。
<片山首相>
「問題は、民主主義を政治上のみにとどめることなく、これを産業、経済の部面にも広く透徹させたいと考えておるのであります。産業経済の発展は、実にその機構の民主化に負うところ多大であるのであります」
3日には野党側から吉田自由党総裁が質問に立ちました。
<吉田自由党総裁>
「勤労大衆に理解を有せられる首相におかれて、よく現下の経済実相を国民大衆に理解せしめられ、産業の合理化、過剰人員の整理等につきましては、失業対策とともに適宜適当な措置をとられるようにと希望いたすわけであります」
[2]水禍、ついに各地を襲う 01:22
すでに本社ニュースで警告したとおり、ついに水害は裏日本の各地を襲いました。
<長野>
27日夜からの豪雨で長野県大糸線の鉄橋は押し流されました。
<山形>
山形県米沢地方では山間の小川までどっと出水、200余町歩の水田が荒らされました。
<石川>
石川県河北潟付近では昨年と同じ数百町歩の田畑が水びたしとなり1万2000石の米もとれないといわれています。
<新潟>
新潟県下でも各河川の堤防が決壊、水田3万余町歩に冠水しました。特に岩室村では排水路の不備から水の引く見込みはなく、農民たちは少しでも作物を助けようと必死の努力を続けています。
[3]水谷さんはだかで視察 常磐炭田 00:56
炭鉱国家管理の問題などを実際に見るため、水谷商工大臣は6月29、30の両日、茨城県高萩、福島県常磐の両炭鉱を視察しました。地下2000尺の坑内に初めて入った水谷さん、摂氏43度という猛烈な蒸し暑さの中でしみじみと労働者の苦しさを味わいました。
<水谷商工大臣>
「常磐炭鉱が世界一の暑い山であるということは聞いておりましたが、さて自分が入ってみると聞きしにまさるひどいところであって、この悪条件のもとで8時間労働をやるところの炭鉱労務者の苦労というものは一通りでないと思います」
[4]神保元中佐帰る 東京<時の話題> 00:38
話題の人、神保元中佐が6月28日、品川駅に到着。同氏は戦争中、日本軍に殺されようとしたロハス現フィリピン大統領を救い出した人です。
<神保元中佐>
「ロハス大統領は、全比島民衆の衆望をになっておりましたので、大統領ご自身のご人格が自分の危険な運命を開いたものと思っております」
[5]食いだおれ追放 大阪<時の話題> 00:41
食いだおれで有名な大阪市内の各料理屋も7月5日からは閉鎖と決まりました。
<店の女性>
「もう第一ね、いちばん困るなと思いましたです。子供は抱えていますしね、どうしてやっていこうかしらんて、焼けてしまうたし、何にもあらしまへんしね」
しかし閉鎖を目前に各料理屋さんとも新円階級で大にぎわいの様子です。
[6]“俺たちにエサを与えよ” 東京<時の話題> 00:30
えさに悩む豚、牛、鶏などが、7月2日、上野の山下で人間によびかけました。
「あーあ。おなかがぺこぺこにすいちゃったわ。毎日毎日こんなすき腹じゃ、ろくな卵もうめやしないわ。ねぇ、みなさんわたしたちに餌をください。」
[7]行き悩む“国鉄”再建 運賃値上げ是か非か? 東京 00:58
6月30日、東京日比谷公会堂で国鉄の運賃値上げ問題について放送討論会が開かれ、結局、反対の意見が多数を占めました。
<討論会参加者·男性>
「国鉄はある程度の値上げをしなければならないということは認めます。しかし、その率はいくらか、その根拠はどこにあるか」
<討論会参加者·男性>
「7月5日よりの値上げの達しがきております。運賃、まだ一般に知らせていないのは当局の怠慢であります」
<討論会参加者·男性>
「国鉄の運賃が値上がればインフレが増進してついには日本が滅びてしまうのではないかと思いますが」
<伊能鉄道総局長官>
「生活必需物資の運賃値上げにつきましては、(聞き取り困難)生活水準を著しく窮迫せしめることのないような基準のもとに値上げ率を考慮いたしております」
[8]又も列車事故 山陽線 01:07
値上げをしようとしている矢先、またも列車事故が起こりました。7月1日午後1時過ぎ、山陽線光·下松間で東京発801列車が脱線。機関車もろとも客車4両が転覆して死傷者74名を出しました。このへんはたびたび事故を起こし、前から危険だといわれていたところです。度重なるこういう惨事は国鉄再建の前途に暗い影を投じています。
