日本ニュース 戦后編 第18号
1946年(昭和21年)5月16日
[1]生産再開へ勤労者は進む 02:57
夜明けの4時ごろから東京銀座松坂屋に続々集まってきた人の群れ。それは5月06日から3日間開かれた就職相談会に押しかけた失業者です。会場に張られた募集広告は見渡すところ、生産をさぼっている大工場からの求人申し込みはほとんどなく、20名、30名といった小口ばかり。
日立精機習志野工場では終戦以来工場を閉ざして、頑として生産再開に応じないので、たまりかねた従業員は団結して生産再開を要求、デモを行っております。
しかし一方、三菱東京機器のように労働組合自ら失業者の採用に乗り出したところもあります。
「…あなたは労働組合についてどういうようなお考えでしょう」
「よくわかりませんが、我々働く者に、必死に働くためにも、労働組合は是非必要だと思います」
また、日本電気では待遇改善の要求を貫徹し、組合自ら進んで増産に乗り出したところもあります。
「…なのでありますが、生産高において、まだこれだけの開きがあるのであります。この開きをいかにして埋めるかという問題に関して、今日ここで皆さんがよくご協議願いたいと思うのであります」
資材さえくれればいくらでも増産する。よし、それでは組合の力で資材を獲得しよう。もうからないのでぐずぐず生産をさぼっている資本家を尻目に、労働者が自分たちの手で4倍以上を増産しています。
かくて平和産業の復興は、勤労大衆自らの強い力で資本家側を鞭打って活発に進められ、復興の動脈、電話通信機や、もう要らなくなった戦車を改造してトラクターやリヤカーを続々生産。労働者の盛り上がる力を強く示しております。
(戦車を用いてリヤカーを生産する工場の様子)
[2]食糧増産の苦闘も空し-足尾鉱毒の害- 00:55
明治20年代の足尾銅山の鉱毒事件といえば、お年寄りにはまだ昨日のように思われる事件。それが今また持ち上がっております。掘り出された鉱石の毒を含んだ粉が渡良瀬川へ流れ込み、終戦后、堤防を築いて食い止めようとしたのですが、これも効果なく、付近の畑約6000町歩の作物は惨憺たるありさまです。
戦時中陸軍が、「銅を掘るのだ。5000町歩や6000町歩の畑がなんだ」と放言し、そのため、作物はこんな惨めなありさまです。
04月27日、北野[重雄]知事は現場を視察。農民の声を聞きましたが、根本的な解決が要望されております。
[3]フーヴァー元大統領来朝<時の話題> 00:48
極東方面の食糧事情を視察中のフーヴァーアメリカ元大統領は、5月05日厚木飛行場に到着しました。
翌6日、宮城前で騎兵第1師団の分列式に臨んだ后、日本の食糧事情を視察。翌7日、慌ただしく日本を去りました。
[4]こんなところに隠匿物資 -外務省-<時の話題> 00:55
外務省に隠匿物資があるというので、5月06日、関東食糧民主協議会ほか労働団体300名が外務省に押しかけました。代表は、松島次官その他係官に交渉しましたが、言を左右にして応ぜず。その交渉している部屋にウイスキーが転がっている始末。
一方、倉庫にはしょうゆ、砂糖、缶詰、味噌、米など、外には炭が山のようにありました。これらの物資がどこへ行くのかうやむやにならないように、人民の監視が絶対に必要であると代表側は主張しております。
[5]政局未だ混迷 民主か保守か 03:09
次の総理大臣を目指して、さっそうと宮中参内のモーニングまで支度した自由党総裁鳩山一郎氏に、ついに公職追放の指令が発せられました。さすが自由主義の衣の下に着た鎧が隠しおおせなかったわけです。かくて新内閣首班は社会党片山氏と思われたところ、幣原首相により、社会党単独内閣では安定勢力たり得ずとして、黙殺されるに至りました。
(“人民の内閣を”勤労大衆動く)
(05月08日)
05月08日、働く人民はこの成り行きに憤激し、社会党本部に激励デモ。
(05月09日)
さらに翌9日には、民主人民政府をつくれと叫んで、首相官邸をメーデー下で取り巻きました。
(05月10日)
続いて10日、再び首相官邸前を埋めた勤労大衆の声援のうちに、社会·共産の両代表は初めてがっちりと手を握って、人民戦線の立場から幣原首相の態度を不当なりとして、強硬に詰め寄りました。
「…これは総理に(聞き取り不能)代表しての我々の願いではありません。全国勤労大衆の要望を代表いたしまして、衷心から総理にご注意申し上げ、警告を発するとともに、また切望する次第であります。」
<徳田球一>
「今は社会党と共産党しかない。そして大衆団体との結合を持つ問題以外にはない。それが人民戦線なんだ。これは人民戦線をこれからすぐやらないといかん。だからあんたはそれを妨害しちゃったんだ。これはあんたが4党会議を開いたって何したって、それは無効だ」
<幣原首相>
「お答えをしないという条件でお目にかかったんですから。それについては何度おっしゃったって同じことで..」
<野坂参三>
「よく考えて下さい。あんたらこうしてぐずぐずして組閣を1日、2日延ばすたびにこの社会不安はますます深くなる。この責任は全部あなたが負うべきですよ。だから我々としては、あなたがどうしても答えられなければ、天皇に直接行くより方法はない。これに対して、あなたは異議はないと思います。どうですか。」
会談后、社会党加藤勘十、共産党徳田球一の両氏はこもごも立って報告。
「…いっさいの反動(聞き取り不能)することは、決して困難な仕事でないことを、お互いが覚悟しなければならんと思うのであります」
「社会党の片山君に対しては、単独内閣を覆すというのに対し、これを拒んでおるのだ。果たしてこれが正当だろうか!」
「そうだ!」
「実に越権も越権、驚くべき越権である。民主戦線万歳!」
「バンザーイ!」
「バンザーイ!」
「バンザーイ!」
かくて、勤労大衆の人民戦線は、保守勢力と真正面から対立するに至りました。
